Mick Stevens - See the morning / No savage
word
彼の素晴らしい音楽が一人でも多くの方の耳に届き、そして何かを感じていただけたら、と思い制作いたしました。
See the morning
のオリジナルレコードのジャケットは一枚ずつが手作りで、数種類のデザインの存在が確認されておりますが、
今回はドイツ盤の再発とは異なり、Mickさんが自身の血液を着色に使用したという手描きのイラストを用いたジャケットデザインを引用!(※1)
不思議な構成の頭部のイラストで美くしいです。
また、ドイツ盤には付属していなかった歌詞カードを付属!
極一部のオリジナルレコードに付属していた歌詞カードからの引用と、Mickさんが自身のために制作した私家版ソングブックからの引用です。
ところどころMickさんらしい不思議な挿絵も描かれており、また、残されていたMickさん自身による各楽曲の手書きライナーノーツも掲載!
そして、No
savage
word はオリジナル音源と同様のステレオ音源としては初の再発となります!
'73年頃、当レーベルからすでにリリースされたThis
Morning収録曲などの録音でMickさんはステレオ音源による作品制作を開始しており
'75年制作となる今作もオリジナル盤はステレオ作品として制作されておりましたが、
ドイツ盤の再発は左チャンネルのみをソースとしたモノラル盤としてリリース。
よって右チャンネルから聴こえていたボーカル、コーラス、パーカッションの音などがほぼ消失し、
左右に動きまわるエレキギターの動き等も再現されず、
不完全な状態で多くのリスナーたちに鑑賞されている状態が長く続いておりました。
本来の形の今作は、特にステレオ効果を有効に使った音楽であり本当に素晴らしく、
ドイツ盤のみを聴いて今作をあまり好きになれていなかった方にも是非とももう一度聴いて欲しいと言えるCDです。
ボーナストラックは、'72年前後に録音されたと思われる楽曲6曲、'77年、'78年頃と思われる楽曲8曲。
'77年の音源もスタジオ録音以前のデモ音源が中心で、
特に初期のホームレコーディングの作品群がお好みの方にお勧めです!
Mickさんは何ヶ国語もの言語を習得し、
具象の範疇には収まらない美しい絵画を描き、
その時代の常識には収まらない素晴らしい楽曲も書き、
演奏では巧みなギターテクで圧倒的なライブパフォーマンスを披露し続け、
そして、制限のある2トラテープデッキによるピンポン録音で、気の遠くなるような回数の多重録音でその集中力を発揮し
自主制作レコードをリリースし続けた、多才で天才的な人物であったそうです。
視覚的なイメージを呼び起こす作品群からか、サイケデリックフォークとして評価を得ている彼の歌には一体何が表現されているのか…
See
the morning 最後の収録曲の「Salotan
cinonrever」というタイトルは、
Mickさんともうひとりの人にしかわからない、どこか特定の場所を意味する暗号なのだそうです。
特にこの楽曲の歌詞は、私家版のソングブックに自身の血液によって記されており、まさに心血を注ぎ込んだ作品だということでしょう。
この楽曲を筆頭に、非常にパーソナルな部分が刻み込められていたと思われる楽曲群ですが、
聴いていると、筆舌にしがたい感覚を刺激するイメージの想起が次々と嵐のようにまきおこり
非常に陶酔的で美しく、五感さえ刺激するこれらの音のヴィジョンは、
いくらかの人たちにとっては非常に強い共感を呼び起こすであろうことは信じて疑いません。
仲間たちの協力も得て録音されたNo
savage
wordも本質的には変わりなく、
いずれも音楽表現の可能性を感じずにはいられない究極の作品群です!
Mickさんは87年にガンで亡くなられてしまいましたが、彼の素晴らしい音楽が多くの人々の間で聴き続けられることを願ってやみません。
見開き紙ジャケット、歌詞カード2枚、帯付属、2枚組CDです。
※マスターテープに起因するノイズが一部ありますことをあらかじめご了承ください。
※1 一部書籍やネット記事ではドイツ盤のジャケットの元になったジャケットにも血液が使われたと誤解が書かれておりますが、
実際にはあの原版となったジャケには赤インクが使われているのみです。
Mickさんは極一部のジャケットと、自身の私家版ソングブックの歌詞を書く際にのみに血液を用いたらしく、
それを説明した英文レビューの日本語翻訳をする際に誤訳されてしまい、誤解が広まったようです。